星野と鱗手の趣味のリスト
本棚紹介その1




つい最近、紛失していたデジカメを発見した嬉しさで、自分の本棚を撮影してみました。
あざみさんから譲り受けた品も含む、鱗手オキルのマイ・コレクションを紹介します。
画像 カラーボックス1(マンガ)‐上段

・「文春文庫コミック版」のオムニバス・シリーズは大のお気に入り。マイナーながら(?)傑作短編が盛り沢山。付録の資料も高級なものばかり。

・「マンガで読破」シリーズは「学習」を抜きにしてマンガとして好きかも。哲学書をストーリー漫画にしてしまうという大胆な試みにビックリです。

・「ガンダムさん」、漫画には面白いネタがいっぱいあったのに、アニメ化された部分は案外地味なチョイスだったなぁ…というのが正直な感想。

・後列左の三部けい先生の「鬼燈の島」は特に感銘を受けたマンガです。ホラーを思わせる怖い表紙ですが、むしろジュブナイル冒険譚の叙情を全面に醸している作品です。こういうジュニア小説に出会いたいなぁ。

画像 カラーボックス1(マンガ)‐中段

・言わずと知れた「三つ目がとおる」と「デビルマン」、大好きです。天然ボケなのに天才的な絆創膏の写楽くんも、クールなのに本当は甘えたがりの三つ目の写楽くんも、どちらも二面性があって素敵。また、「デビルマン」は恋する悪魔を描くアニメ版と、苦悩する人間を描く原作とで二度も三度も美味しい作品。講談社文庫版は、明に対する了の思慕(愛情)がほぼ断定形で描かれている「新デビルマン」も3巻に併録されています(「リトル・ビッグホーンの悪魔」で明を見つめる了の眼差しが本当に切ない)。

・伊藤実先生の『アイシテル』。中でも、「なにも感じない子が/「わからない」とは言いません」という台詞がぐっときました。起きてしまった悲劇の後の、美談では済まされない部分を丁寧に描いているからこそ映えるラスト。ニュースの字面からは心に呼び起こしにくい、加害者親族の物語を語り切った著者の技量に賛美を送りたいです。

・望月峯太郎先生の『ドラゴンヘッド』、僕はこの結末について肯定派。
画像 カラーボックス1(マンガ)‐下段

・「風と木の詩」と「パタリロ!」と「はみだしっ子」。何だか神のような棚になっております。あざみさんはアンジーのファン、僕は殿下のファン。

・割と賛否があったらしい後期の「クレヨンしんちゃん」、僕は大好きです。主人公の大人を引っ掻き回すパワーは相変わらず(でも、下ネタは少し控え目かな)。個人的な感想ですが、「トホホ」落ちが多い初期に比べて、何だかんだでトラブルを大団円の笑いにしてしまう話が終盤には多い気がします。読後感がとてもあったかいです。

・高橋しん先生の『トムソーヤ』、マーク・トウェインの原作の既に有名になっているやんちゃエピソード以上に、センチメンタルなエピソードを掬い上げているのが魅力的。そうそう、「トム」って自分の死に哀しむ人を想像して自分が切なくなってしまうくらい、繊細な子なんですよね。
画像 カラーボックス2(マンガ)‐上段

・ホーム社の「NHKまんがで読む古典」シリーズはマンガとして大変面白かったです。殊更に明るいまるで現代エッセイマンガのような「枕草子」、繊細な哀感のある「更級日記」と「蜻蛉日記」、「夕顔」を語り手にするなどの新しい趣向の「源氏物語」。はずれなしの全3巻でした。

・楳図かずお先生の「赤んぼう少女」、「異形」として生まれてしまった者の悲哀の物語って、どうしてこんなにも胸にくるんでしょうかねぇ……。

・村枝賢一先生の「仮面ライダーspirits」、とにかく泣ける。映像化希望。

・後列右は松本零士先生の「漂流幹線000」と「蜃気楼フェリー0」。松本ワールドの美女の中にもこんな変わり種キャラ(大酒飲みや男口調)がいるんですね(笑) 奇抜なストーリーも最高に面白いです。
画像 カラーボックス2(マンガ)‐中段

・後列右のコンビニ版「サイボーグ009」は、コンパクトな3冊で「誕生」〜「地下帝国ヨミ」編までを発表順に読めるのがありがたいです。

・『アメリカン・パイ』(秋田文庫版)は、萩尾望都先生の表題作「アメリカン・パイ」と「アロイス」を含む9編の傑作が収録された神々しい一冊。

・作家単位で一番読んでいるのはやっぱり手塚治虫先生の作品かも。重厚な人間ドラマのみならず、オフビートな娯楽漫画の時の作風も好きなんです。「メタ・鉄腕アトム」とでも言うべき「アトムキャット」がキュートで魅力的。幕引きが美しい「七色いんこ」もぜひアニメ化してほしい作品です。

・藤田和日郎先生の『邪眼は月輪に飛ぶ』『黒博物館スプリンガルド』、一冊読み切りでこれだけのドラマが見せられるということにビックリ。
画像 カラーボックス2(マンガ)‐下段

・あざみさんに勧められて白土三平先生の作品の面白さを知ったのは最近。「サスケ」の大猿の父ちゃん、カッコよすぎ。「赤目」の復讐、壮絶すぎ。

・竹宮惠子先生の「変奏曲」(ハードカバー版!)は、あざみさんから誕生日プレゼントとして貰ったもの。とにかく音楽表現が美しいです。

・「小学館叢書」の頑丈な表紙の質感が好きなので出来ればそちらで集めたいけれど、多くが絶版で残念。でも、「小学館文庫」は紙質は良いので満足しております。「漂流教室」の極彩色の装丁は素敵。

・楳図かずお先生の「こわい本」シリーズ1巻収録の中編「鏡」が、楳図マンガ初体験でした。アイデンティティ崩壊の危機がじわじわ怖い。切ない余韻を残しつつもしっかりと納得できる結末という共通点も含めて、筒井康隆先生の「ミラーマンの時間」と並んで好きな鏡ホラー。
画像 カラーボックス3(児童書)‐上段

・小中学校の時に夢中で読んだものばかり。眺めているだけで胸が熱くなります。眉村卓先生のSFジュブナイルは、青い鳥文庫で「なぞ転」を読んで以降、背表紙が単色の頃の旧角川文庫、秋元文庫にまで手を出して集めました。交渉のための最も適切な言葉を、即興的に編み上げていく理知的な中学生主人公の姿は、地味だけれどヒロイックでかっこいいんです。

・コミカルなミステリーで知られる蘇部健一先生の児童読み物「ふつうの学校」が下ネタも含んだ容赦のないギャグタッチで好きです。子どもの時にこっそりと読めたら幸せな本とは、こういう本のことを言うんじゃないかな。

・クレヨン王国の初期短編集「いちご村」と「なみだ物語」、翻案版「フランケンシュタイン」と「ポンペイ最後の日」の切なさには泣かされました。

・後列の「講談社少年少女日本文学館」はイラスト資料が秀逸。これは作品を熟読したい大学生以上の大人にこそ役に立つのではないかと……。
画像 カラーボックス3(児童書)‐中段

・この棚も思い出が多いなぁ。『宇宙人のいる教室』はいつ見てもピュアな気持ちになれるし、『ゴジラ、東京にあらわる』の科学者の苦悩はいつ読んでも迫るものがある。不朽の名作『ベロ出しチョンマ』は言わずもがな。収録作の「八郎」「三コ」は英雄の鑑。それに、『魔女になりたいわたし』のような、長崎源之助先生の友情・人情ものも好きだなぁ。自分より先に大人になってしまう女の子への、男の子の少し悔しい気持ちは、『東京からきた女の子』(偕成社)などにも通じていると思います。

・特筆したいのは、ヤーコブレフの短編集『初恋物語』(旺文社)。子どもたちの生活風景の中の、美しく切ない思いを閉じ込めた一冊。切実な生活童話であると同時に、ごっこ遊びの夢がふと覚めてしまう様子にどこか哲学的な寓意の匂いをも漂わせている「美人ごっこ」は紛れもない名作。

・少女漫画・少女向け小説・児童書と活躍の場を越境する折原みと先生の『緑の森の神話』はぜひ復刊を希望。意外なオチも含めて感動作。

画像 カラーボックス3(児童書)‐下段

・『ダレン・シャン』シリーズ、最高です。僕とあざみさんの愛読書。

・石井桃子訳『クマのプーさん』は笑いの宝庫。現在の児童にスムーズに伝わる言葉かどうかは賛否ありそうですが、日本語ユーモアとして第一級品。

・エーリッヒ・ケストナーの児童文学は今読んでも新鮮。たとえば『点子ちゃんとアントン』で友だちを助ける主人公に対して、作者を模した語り手は意外な感想を漏らします。「うらやましい」と。そして、「みんなひとりひとりが、友だちの知らないところで、その友だちのためにひと肌脱ぐめぐりあわせにめぐまれるよう、願っている」(池田香代子訳、岩波少年文庫)と。こういうセンスが素敵だなぁ。『ふたりのロッテ』のお父さんに、ただ「父親」であることを強いるのではなく、ちゃんと一人になれる時間も残してあげるところなども、「愛の物語」だけに収斂してしまわない美しいところだと思います。
画像 カラーボックス4(実用書)‐上段

・教養系・哲学系・趣味の本など。後列左の『現代思想入門』・『現代批評理論のすべて』・『別册宝島 わかりたいあなたのための現代思想・入門』(2冊)は現代思想を論文のツールとして探したい学生にとっては3大スタンダード。文系学生の基本装備のような印象も。これはあくまでガイドなので、オリジナルの名著の既読数が少ない自分を改めて反省……。

・『学問のしくみ大辞典』(日本実業出版社)は学問のジャンル、アカデミックな「界」を分類してくれる便利な本。勉強したい時や進路に悩んだ時に、まず先に開きたい「メタ・学問」の書。眺めているだけでも楽しいです。

・『世界の日本人ジョーク集』は、ジョークの中の各国のキャラクター化が興味深い一冊。耳の痛いお説教路線よりかは、日本については「愛されている」側面が強調されているので、全体的にライトな読み心地です。
画像 カラーボックス4(実用書)‐中段

・ちくま新書、扱っているテーマにどことなく高級感があって素敵です。中でも仲正昌樹先生の『「分かりやすさ」の罠』(不毛な二項対立をいかにしてはぐれるか)、竹内薫先生の『世界が変わる現代物理学』(モノが先かコトが先かに関する最新局面)、石原千秋先生の『国語教科書の思想』と続編『国語教科書の中の「日本」』(テクスト論の立場で読み解く国語教科書が含み持っている言説)には特に感銘を受けました。

・後ろの方に溜め込んでしまっている、せっかく家にある語学の本、ちゃんと勉強に使わないと(汗) 最近、英語力があやしい……。

・ネコの写真集『キャット・カタログ』(後列真ん中)は子どもの頃にあざみさんにプレゼントしてもらって以来、ずっとお気に入り。どの種類のネコも美しすぎる。ちなみに僕はこれでネコの種類を覚えました。
画像 カラーボックス4(実用書)‐下段

・子どもの頃、『学習漫画 世界の伝記』シリーズがすごく好きでした(今でも後列に…)。音楽家の「モーツァルト」「ベートーベン」「ショパン」の巻が特に面白かった。千明初美先生の描くショパンはとても「美人」でした(笑) ショパンにはどこか中性的なイメージがあるのか(実際にリストも追悼の言葉で「彼は女性的天使」と言ったそうですから)、手塚先生の『虹のプレリュード』のフレデリック青年もとても女性的で美しかったのが印象的です。

・『現代思想のパフォーマンス』(光文社新書)を読んで、内田樹先生の文体のスマートさに惹きつけられ、文春文庫の彼の本をいくつか買いました。一見色々な批判を呼びそうな大胆な内容を、非常に責め入りにくい緻密な話法で発信できてしまう言葉選びのセンスが素敵。

・清川あさみさんの美しいビーズアートが見られる『銀河鉄道の夜』と『人魚姫』。これも以前あざみさんから貰った素敵なプレゼントの一つ。
3段カラーボックスってすごく便利で、今お気に入りの収納グッズです。
B6本と文庫本、A5本と新書本以外にもさまざまな組み合わせができそうですね。
以上、鱗手オキルの本棚紹介第一弾でした。